コミュニケーションをデザインしなければ
戦略PRという考え方があります。これは戦略PRプランナー本田哲也氏に共鳴してお話させていただきます。先ほどからブランディング戦略とかプラットフォーム戦略とかいうアプローチをしていますけれども、まさしくPRを戦略するという概念です。
これは少しわかりやすくいうと、まずAIDMAという広告用語があります。AIDMAとは、注目度を高める広告の基本的な法則です。例えばラブレターというメディアがあるとします。男性から女性にラブレターを渡す目的は言わずと知れた目的があるということです。広告も一緒です。広告のメッセージを発してその商品とかサービスを買ってほしいとか受け取ってほしいという目的があります。
AIDMAは、「Attention」「Interest」「Desire」「Memory」「Action」のそれぞれの頭文字を取ったものです。まずAttention。注意を引くということですね。Interest、興味を持たせて、ちょっと買ってみたいなという欲望、そしてそれをちょっと我慢してMemory、頭の中に記憶させて、それで「やっぱりあれは欲しかった」とか「あそこは行ってみたかった」とかいう仕掛けを作るための広告の基本法則です。わかりやすく言うとチラシで50%オフとかデカデカ出ているような広告ですね。50%オフというのがAttentionの手法です。「いいぞいいぞ」とか「おいしいぞ」とか。一番引っ掛けがいいのが惹句(じゃっく)ですね。50%オフとかいう売り方。例えば「全品100円でランチ」とかいろいろあると思います。
それが最近ではAIDMAからAISASというふうに変わりました。お茶の間という言い方はもう死後になってきましたが、AIDMAの時代は、家族みんなでテレビを見てわぁわぁ言いながら「あれ安いね」とか「あそこ行ってみたいね」とか「あれが欲しいね」とかいうAIDMAの法則が通じる時代でしたし、シチュエーションでもありました。
AISASに変わったというのは、先ほどからインターネットの影響が強い。頭文字でいきますと、AttentionとInterestは変わりません。変わったのはSearch(検索)、Share(情報共有)、このふたつのSです。「安いぞ」「いいぞいいぞ」「欲しいな」とか思わせるところのAttention、Interestは一緒ですが、情報を収集するためのツールとして手元にパソコンや、スマートフォンがあり、すぐにSearchできるわけですよね、日常生活の中で。「それ、ほんまかいな」とか「もっとほかに安いものあるん違うの」とか「もっといいものあるん違うの」とか、Searchできる。要するにSearchイコール比較できるということ。
今「価格.com」とか商品をネットのサイトで簡単に比較できて、いいものが選べるという生活環境にあります。それがSearchできるということの強み。お茶の間時代はそれがありませんでした。Searchして「よし、これに決めた」と買ったり行ったりするのが旬の時。今、特に盛り上がっていますのがShare、あとSpread(広げる)という言い方もありますけれど、ミクシーとかツイッターとかフェイスブックで「あそこ行ってよかったな」とか「これ買ってよかったわ」とか言って、みんなでShare、共有するという。そしてまたいろいろなSNSを使ってSpreadする、拡大していくというようなことになっています。
AIDMAからAISASに変わった、要するにインターネットが台頭してこのように消費行動、消費スタイルも変わってきたよ、情報の伝わり方も変わったよ、という話です。
もうひとつインパクトの強いやり方というか引きこむやり方がI-AISASです。AISASの部分は一緒ですけれども、AISASの以前にI-(Interest)が最初のショルダーにのってきます「空気をつくって生活者に気付かせる!」、これがInterest。
要するに空気づくりですね。広告もラブレターの書き方・渡し方も似たようなものというような言い方をしましたけれど、例えば彼女を誘っていろんなコミュニケーションをしたいという場合、今日はじっくり話したいというときに、店選びとか環境をまず考えたりします。それが簡単にいうと最初のI-Interest。要するに空気づくりみたいなものを自然にやっているんですよね。
あえてこういうふうにセオリーというかロジックで話をしているように思いますけれども、普段みんな自然にやっていることが多いです。あえてロジックで話をするとこういうことになるということだけで。皆さんはそれなりの知恵できちんといろいろな手法で自分をアピールしたりとかコミュニケーションを取ったりするというのは十分できているかなというふうに思っています。
ここで言っておきたいのがSearchとShare、そしてAISAS の前のInterest、I、空気づくりということが大切だということです。
これは何故重要かといいますと、われわれが受け手として考えると、もしかして空気に流されて、情報に流されて、間違った行動とか間違った情報をうのみにして自分たちそのものが勘違いしている可能性があります。ここ、ちょっと注意したいということで、頭の片隅に置いていただいて次の話に移ります。
講演:株式会社和歌山リビング新聞社 代表取締役社長 西田 弘
(株)和歌山リビング新聞社代表取締役社長。>続きを読む